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はないちもんめ

※このお話は尋迅です。  ◇  千尋は溜息をついて高井戸のマンションの部屋を訪ねる。ただいまとリビングに入れば、帰ったのかと意外そうな異母兄の声が返ってくる。ソファに座ったまま、千尋の方に顔を向ける。「今日は御殿山に泊まるんぢゃな…

キャンディ・キス・チャレンジ

「学生の間で流行っているらしい、」 正確に云うと学生のカップルの間で、らしいが。そう云って大学で講師を務めるこの叔父はどこか人の悪そうな顔をして凛一の前に立っていた。凜一は夏期休暇を利用して叔父の借りる池畔の家に遊びに来ていた。「面白そうだ…

紫色の朝

※こちらは『彼等』の千迅さんの台詞の中でだけ登場する、千迅さんの予備校講師時代の同僚氏とのお話です。     ◇ どうしてこうなったのか解らない。 英とは元々、勤務先の予備校の同僚だった。私立文系コースで英語を担当する俺とは異なり、国公立の…

夜の底

 雲に遮られてなお白銀の光は夜天を明るくしていた。満月の光は柔らかくも輝きが濃い。雲は月光によって生じた影のように薄暗く、丸い月に寄り添っていた。「……んっ……、」 静かな夜陰に吐息がこぼれる。苦悶に似た声は痛みを堪えるかのごとく喉元から絞…

キス、初めての

 ※千迅さん中2、千尋さん小5の設定です。  離れて暮らす兄がいる。兄は海辺の町で兄の父とふたりで暮らしている。海辺の町は子どもだけでは行くことのできない遠い町なので、千尋が兄に逢えるのは学校の長期休暇のときだけだった。 兄は寄せ…

落葉

※千迅さんの実父の小椋氏と養父の英氏のお話です。お話の展開上、英氏は栖二(せいじ)、小椋氏は壱彦(かずひこ)、千迅さんのお母さんは葉月としています。もしかして親世代はこんな関係だったのでは……という妄想です。 「ハオチル」 知らせ…