橋本治「短編小説傑作選 鞦韆」
ちくま文庫 2006年4月10日
いやすごかったね……。全編視点人物の台詞だけで構成されていて、台詞の調子だけでその状況が描写されるので巧み。あらすじのインモラルな感じに興味を持って手に取ったんですがもう本当にドエロかった……。登場人物たちのインモラルな関係性だけなら塚本邦雄を彷彿治させる人間関係崩壊ぶりでした。どろぐちゃ……。絶版で電子もないようです。
魔
カメラマン×少年モデルのインモラル。カメラマンは妻子います。最初は少年の方が好きになっちゃったのって感じで健気だったんだけど、リバってからの少年は人格入れ替わったんかっていうぐらい不良少年の様子で、口調は荒くおじさんカメラマンを辱め始めるので堅気じゃない感すごい。もう完全にジェットコースターだよこれ。おじさんもう躾られてしまったのでは……？
陣
中学生×作家夫人の危ない関係。この中学生がくせ者で、何が本当のことかさっぱりわからない言動で奥様を翻弄するんですよね。中学生という子どもの皮を被って奥さんを襲うんだけど、夫が襲うように言ったとか、そんわけないだろうとか、もう支離滅裂で大変。奥さんのこともきれいと言ったその後夫は俺の女なんだとかにはババアとか言うので、本当こわい。こんな男に狙われたら逃げようないって……。
陣・2
陣の続き。前回のことを盾にまだ奥さんに付き纏っているんですが、今度は夫は俺の女だとか言い出すので大変。嘘か本当かはわかりません。そのスリルがすごい。「旦那とおんなじところでやってみような」とか、辱めの天才では……？？？
媚
こちらも家庭崩壊中のある富裕なお家のめちゃくちゃな内情。年老いた義父に体を弄ばれている嫁の独白なんだけど、義父にされたことやその様子を知っていながら何も云わないけれど睨み付けたりしてくる義母のことを滔々と語っていくんだけど、仕舞いにはお義母さんとも寝ていたと言い始めるからもう大変。みんな狂っている。
笑
こちらは異常病院に診察受けにきたばっかりに、とんだプレイに遭ってしまう患者さんの話。医者も看護婦もみんなおかしいです。尿道系のね、そういうプレイも入ってくるんでね、もう本当プレイが豊富……。
鬼
奥さんがひたすら夫との行為について罵倒し続けています。これまでになんかあったんかな……。もう修復は困難なところまできてそうな罵倒ぶりですが、最後には首を絞めてとなるので作品集の最後にふさわしいですね。本当すごい罵倒するので、ある意味気持ちよかったですね。
独特の手法で書かれているので、あらすじを追うよりも本編を読んだ方が面白さがわかるタイプだったので、絶版・電子なしなのが悔やまれる……。